NPO会計支援センター 代表 荻野俊子
NPO法人の会計は、一般企業の会計となにが違うのですか?と質問されることが非常に多くあります。経理実務の最低限必要なことは、NPO法人でも一般企業でも変わりはありません。また、事業規模からみると、個人事業や一般企業とあまり変わりがないように見えるかもしれません。しかし、本来は、もっと根本的なところで大きな違いがあるのです。
なにが違うのか。それは、会計に対する法人としての「考え方」であり「姿勢」が違うのです。NPO法で定められている「正規の簿記の原則に従う」「継続性の原則」「明瞭性の原則」の3つは最低限守らなければいけませんが、それはNPO法人に限らず一般企業でも同様です。しかしそれだけではなくNPO法には「情報公開」が義務付けられています。このことは会計処理に大きな影響を与えるのです。NPO法人の会計の目的は、内部管理と運営のために行うのと同時に、外部に対しては「NPO法人を広く支援し支えてくれる人たちの信頼に応えるために、一般に公正妥当だと証明できる手続きによって作成された会計報告を広く地域住民や関係している人たちに示すため」に会計を行うのです。この基本のところをNPO法人のスタッフも理事も明確に理解していなければ、会計処理は正しく行われません。単に税金の計算を目的とするための会計ではないし、また税務署から調査をうけるかもしれないからという理由で会計処理をするのではないということです。たまに耳にするのですが「規模が小さい団体だし、税務申告もしないので、適当な会計処理でいい」というような考え方は、大きく間違っているのです。中には「年度末に所轄庁へ提出するため」に会計をし、会計報告書式をきれいに作成することが会計の目的であるという勘違いをしているところも見受けられます。もちろん「報告書」は所轄庁に提出しますし、見やすくきれいであることは大切です。しかし「所轄庁にチェックをうけるため」に会計報告をするのではなく、所轄庁という公開の窓口をとして広く市民の人たちに自分たちの活動をアピールするために1年に一度、会計報告書を提出するのです。そしてその報告が、どんなに見た目りっぱな会計報告書であっても、そこに表示される決算の金額が「正しい手順によって、正確に記録・測定されたものである」ということを証明できる手続きが行われていなければ意味がありません。今一度、理事会やスタッフ会議で「何のために、誰に説明するために、どのような会計処理をして報告書を作成するのか、についてしっかりと議論しておくことが大切です。外部に対する説明責任という意味において、NPO法人の会計は一般企業よりも厳しく透明性が求められるのです。
しかし、現実には、現場の会計処理では思うように事が進まないケースが多くあります。資金提供元の制限や一方的な論理があったり、活動分野の法に縛られたり、いままでの慣習から逃れられなくて理不尽な思いのまま会計処理をせざるをえなかったり、今まで想定されなかった新しい発想の活動であるために、会計処理においても新しい概念を作り上げる必要があったりと「NPO会計の現場」には、多くの課題と矛盾があります。そういった現場での矛盾や悩みを、現場実務の人たちとともに共に悩み、解決できるものは解決していく。もし法律を変えなければ解決できないような大きな課題である場合には、全国の同様の悩みを持つ法人に呼びかけて「課題を共有し、解決への道をさぐる」ための運動を起こす、というような活動をおこなうことが当センターの社会的な使命だと思っています。個人個人では解決できないことも、共に同じことで悩んでいる仲間を得ることで勇気づけられ、また解決の道を探ることができたり、あるいは問題提起をすることができたりすることも多くあります。このように現場の会計実務を支援し、抱える課題を共に解決していくことが当センターの最も重要なミッションであり、またその活動こそが今のNPO法人の「会計」と「組織」のレベルアップに繋がるものだと信じています。
このようなことを行うために、NPO法人の会計実務の現場をこの目で確かめ、実際に状況を把握し、改善提案をおこなっていくこと。そしていかにすれば説明責任を果たすことができる会計実務ができるのかを、担当者と共に考えて提案していくという手法で、当センターは、日々、NPO法人の会計支援をおこなっています。
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